こんにちは。
梅雨入りして蒸し暑い日が続き、汗による湿疹の悪化やあせもで受診されるお子さんが増えてきました。
体調管理にはくれぐれもお気をつけください。
さて、今年の3月、国立成育医療研究センターから「赤ちゃんの湿疹(アトピー性皮膚炎)を早めにしっかり治療すると、3歳の時点で食物アレルギーになるお子さんが少なかった」という研究結果が発表されました(元のお知らせはこちら)。
これは当院がふだん診察室でお話ししている内容と重なる、子育て中のご家庭にとっても励みになる結果です。
今回はその研究を、なるべくやさしい言葉でご紹介します。
どんな研究だったのか
国立成育医療研究センターを中心とした全国16の医療機関が、生後2〜3か月ごろにアトピー性皮膚炎と診断された赤ちゃん650人を、くじ引きのようにランダムに2つのグループに分けて比べました。
- 早めにしっかり治療したグループ:症状が出てきた段階で塗り薬で炎症をしっかり抑え、よくなった後もぶり返しを防ぐために、状態のよい肌にも間隔をあけながら塗り薬を続けたグループ
- これまでのやり方で治療したグループ:症状が出てきたら塗り、よくなったら塗るのをやめる、というガイドライン通りのグループ
この治療を生後28週まで続け、その後は通常の診療を行いながら、3歳になるまで、食物アレルギー・お肌の状態・身長と体重・他のアレルギーの病気を比較しました。
このグループは2023年にも「早めにしっかり治療すると、生後28週時点で卵アレルギーが減る」という結果を発表しています。
今回は、その効果が3歳まで続くかどうかを確かめるために行われた追跡研究です。
3歳の時点で分かったこと
研究で示された結果をまとめます。
1. 食物アレルギー全体が少なかった
- 3歳の時点で何らかの食物アレルギーがあったお子さんは、早めにしっかり治療したグループで47.4%、これまでのやり方のグループで58.8%
- 早めにしっかり治療したグループで、はっきりと少ない結果でした
2. 特に「生卵」のアレルギーで差がはっきり出た
- 生卵のアレルギーが過去にあったお子さんは、早めにしっかり治療したグループで30.4%、これまでのやり方のグループで40.5%
- 一方で、加熱した卵については、ほぼすべてのお子さんが3歳までに食べられるようになっていました
3. 肌の状態は、両グループとも落ち着いていた
- 3歳の時点で、両グループとも9割以上が「軽症以下」
- 飲み薬や注射などの強い治療が必要になったお子さんはいませんでした
4. スギ花粉に反応しやすい体質も、少なかった可能性
- 2歳の時点で、スギ花粉に対するアレルギー反応のもと(血液検査の値)が出ていたお子さんは、早めにしっかり治療したグループのほうが少ない傾向でした
5. 身長・体重への影響は、3歳の時点では差がなかった
- 治療を続けていた生後28週ごろは、身長・体重に少し差がありましたが、3歳ではその差はなくなっていました
なぜ、肌の治療で食物アレルギーが減るのか
少し前までは、食物アレルギーは「口から食べたことで起こる」と考えられていました。
しかし最近の研究で、荒れたお肌から食べ物のタンパク質が体に入り込み、それがきっかけで食物アレルギーになってしまうということが分かってきました。
- 肌が荒れたまま → 食べ物のタンパク質が皮ふから体に入ってしまう → 食物アレルギーになりやすい
- 早めに肌をしっかり治す → 皮ふから食べ物が入りにくくなる → 食物アレルギーになりにくい
という流れです。
今回の研究は、この考え方が実際の治療成績でも裏付けられたことを示すものといえます。
当院がふだんお伝えしていることと重なります
2026年5月の院内研修のお知らせや6月のアトピー性皮膚炎の受診ガイドでもお伝えしてきましたが、当院では次のような方針で診療しています。
- 赤ちゃんの湿疹を「そのうち治る」と放置せず、早めに丁寧に治す
- 塗り薬は「ティッシュが張り付く程度」の量で、必要な期間しっかり塗る
- よくなった後も、ぶり返しを防ぐためのスキンケアを続ける
- 食物アレルギーが心配なときも、自己判断で食事から外さず、本当に必要な分だけ控えるようにする(食物アレルギーで受診される前のご準備もあわせてご覧ください)
今回の研究は、こうした方針が、長い目で見たお子さんのアレルギーの予防にもよい影響を与えうることを示してくれた内容です。
ご家庭で意識していただきたいこと
早めに受診してください
「赤ちゃんの肌荒れだから、そのうち治るだろう」と様子を見ているうちに、湿疹が長引いて食物アレルギーにつながるケースがあります。
生後数か月の赤ちゃんで、
- ほっぺ・あご・首・耳の後ろなどに赤みやジクジク
- かゆがってお顔をこすりつける、寝つきが悪い
- 保湿だけでは良くならない
といった様子があれば、早めの受診をお勧めします。
特に十日市場周辺地域の方は是非気軽に当院を受診してください。
塗り薬は、処方された量・期間でしっかり塗ってください
診察室で「こわい」とは口に出さなくても、実際にはご家庭で意図的に少なめに塗っていたり、よくなったように見えたところで早めに切り上げてしまったりする親御さんは少なくありません。
「あまり強い薬を長く塗らせたくない」「肌が薄くなってしまうのでは」というご心配からだと思います。
ただ、今回の研究の結果はむしろ反対のことを示しています。
早めに、必要な量を、必要な期間しっかり塗って炎症を抑えたお子さんのほうが、3歳の時点で食物アレルギーが少なかったのです。
最初に控えめに塗ってしまうと、なかなか良くならず、結果的に塗り薬を使う期間も長くなりがちです。
「お薬手帳に書いてある量より少なめに塗っています」「ぶり返したのでまた塗り始めたところです」というお話こそ、ぜひそのまま教えてください。
責めるためではなく、ご家庭で続けやすい塗り方を一緒に考えるためです。
当院では看護師からも塗り方や日常のスキンケアをご説明しています。
離乳食は、自己判断で止めないでください
「卵を食べさせるのが心配で」と離乳食を遅らせると、かえって食物アレルギーが増えてしまうことが他の研究でも分かっています。
今回の研究でも、ほとんどのお子さんが3歳までに加熱した卵を食べられるようになっていました。
進め方にご心配があれば、当院でご相談ください。
注意していただきたいこと
- 今回の研究の対象は「生後早い時期にアトピー性皮膚炎と診断された赤ちゃん」です。すべての赤ちゃんに同じ治療が必要になるわけではありません
- ご家庭で塗り薬の強さや塗り方をご自身で判断するのではなく、診察を受けたうえで方針を決めていきましょう
- すでに食物アレルギーと診断されているお子さんが、「治っているかもしれないから」とご家庭で試しに食べさせるのは大変危険です。必ず主治医にご相談ください
受診のご案内
当院は完全予約制です。
アトピー性皮膚炎や食物アレルギーのご相談は、まず一般診療を
Web予約
からお取りいただき、あわせて Web問診
のご入力をお願いいたします。
継続的な通院をご希望の方には、診察のうえで、当院からアレルギー外来の次回予約をお取りします。
受診前にご準備いただきたい情報は、以下のブログ記事にまとめてあります。
- 子どものアトピー性皮膚炎で受診するとき、伝えていただきたいこと(2026-06-08)
- お子さんの食物アレルギーが心配で当院を受診される前に、ぜひ整理しておいていただきたいこと(2026-06-09)
最後に
今回ご紹介した研究は、「赤ちゃんの湿疹を早めに丁寧に治すこと」が、その先の食物アレルギーやスギ花粉への反応のしやすさにもつながりうるという、ご家庭にとっても、私たち診療側にとっても、励みになる内容です。
赤ちゃんの肌のこと、離乳食のこと、ご心配なことがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
今後とも十日市場こどもクリニックをよろしくお願い申し上げます。
参考
- お知らせ:乳児期のアトピー早期強化治療、3歳時点でも食物アレルギーを抑制(国立成育医療研究センター、2026年3月17日)
- 論文:Yamamoto K. et al. “Three-year follow-up of the PACI randomized controlled trial (PACI-ON): effects of early intervention for atopic dermatitis on atopic march.” The Allergy. DOI: 10.1111/all.70262
- 2023年の先行研究のお知らせ:https://www.ncchd.go.jp/press/2023/0410.html
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