こんにちは。
梅雨の蒸し暑い日が続いておりますが、皆様お変わりないでしょうか。
体調管理にはくれぐれもお気をつけください。
さて、先日ご紹介した「赤ちゃんの湿疹を早めに治すと食物アレルギーも減るかもしれません」では、国内で行われたランダム化比較試験 PACI-ON 研究をご紹介しました。今回はそれを補完するように、世界40か国・190研究・約280万人の子どもをまとめて分析した最新の論文をご紹介します。
どんな研究だったのか
「メタ解析」とは、世界中で行われた似たテーマの研究をまとめて、ひとつの大きな結論を導き出す研究方法です。今回ご紹介する研究は、2026年2月に小児科の国際的な医学誌 JAMA Pediatrics に掲載されたメタ解析で、40か国で行われた190本の研究、合わせて約280万人のお子さんのデータをまとめたものです。
「6歳までに食物アレルギーがどれくらいの割合で起こるのか」「どんなお子さんがなりやすいのか」を、可能な限り厳密な方法(実際の食物経口負荷試験で確定診断されたものに限る、など)で整理しています。
どんなことが分かったのか
研究で示された主な結果を、当院から見て大事だと思うものに絞ってまとめます。
1. 6歳までに、およそ20人に1人(4.7%)が食物アレルギーになります
実際の食物経口負荷試験で確かめられた数字としては、6歳までに約4.7%のお子さんが食物アレルギーを発症することが示されました。
2. 食物アレルギーになりやすいお子さんのサイン
論文で「特に関連が強い」と整理された早期のサインのうち、ご家庭でも分かりやすいものを挙げます。括弧の中の倍率は「そのサインがある子は、ない子に比べて何倍食物アレルギーになりやすいか」のおおよその目安です。
- 赤ちゃんの湿疹(アトピー性皮膚炎)が生後1年以内にある:約 4 倍
- アレルギー性鼻炎や結膜炎がある:約 3 倍
- 離乳食でピーナッツを1歳以降に遅らせて食べさせ始めた:約 2.5 倍(魚・卵・果物の導入が遅れた場合も同じ方向の関連が見られました)
- ご両親や兄弟姉妹に食物アレルギーがある:約 2 倍
- 生後1か月以内に抗菌薬(抗生物質)を使ったことがある:論文では「主要なリスク因子の一つ」として位置づけられています。ただし、生後1か月以内の使用について示された数字は研究によって幅が大きく、まだ精度の高い結論とまでは言えません
3. 地域によって、起こりやすさにかなり差があります
地域別に見ると、オーストラリア・ニュージーランドで約10%、アメリカで約7%と多めで、中東や一部のアフリカ地域では2%前後と低めでした。
なお、日本を含むアジア地域からの研究も、全体の約16%を占めています。ただし、アジア地域全体としての発症率の数字は今回の論文では推定されていません。日本のお子さんに今回の4.7%という数字がそのまま当てはまるかどうかは、慎重に見る必要があります。
4. 母乳・帝王切開・腸内細菌について
- 母乳:予防効果ははっきり示されていません。5〜6か月以上母乳のみで食物アレルギーが多いという報告は、離乳食の開始が遅れたことの影響と考えられます
- 帝王切開:やや弱めの関連が示されています
- 腸内細菌:今後の研究課題です
当院がふだんお伝えしている「3本柱」と重なります
今回ご紹介した結果は、当院が日ごろの診察でお伝えしている食物アレルギー予防の方針と重なるところが多くあります。あらためて3つの柱として整理します。
1. 赤ちゃんの湿疹は、早めにしっかり治す
「湿疹(アトピー性皮膚炎)があると、ないお子さんに比べて食物アレルギーが約4倍多い」というのは、今回の世界規模の研究でも最も強いリスクとして挙げられています。これは、先日ご紹介した国内のPACI-ON研究が示した「早めにしっかり治療すると食物アレルギーが減る」という結果と、同じ方向を向いています。
2. 離乳食は遅らせないで進めましょう(卵・ピーナッツ)
ピーナッツの導入を1歳以降に遅らせると、食物アレルギーのリスクが約2.5倍になることが示されています。魚・卵・果物の導入が遅れた場合も、同じ方向の関連が見られています。
当院では、正確な診断に基づく「必要最小限の除去」、つまり「食べられる程度を見極めて少しでも食べておく」ことを基本方針としています。卵やピーナッツについて、自己判断で外したり、開始を遅らせたりされているご家庭は、ぜひそのまま教えてください。
3. 必要のない抗菌薬(抗生物質)は使わない
今回の研究では、生後早い時期の抗菌薬使用が主要なリスク因子の一つとして挙げられています。先ほどお伝えした通り数字の精度はまだ十分とは言えませんが、これは食物アレルギー予防という観点だけでなく、お子さんの体全体のためにも、「必要なときには使い、そうでないときは控える」という基本姿勢が大切であることを改めて示しています。
ご家庭で意識していただきたいこと
3つの柱を、ご家庭での行動として整理し直すと次のようになります。
- 赤ちゃんの肌に赤み・ジクジク・かゆがる様子があれば、「そのうち治る」と様子を見すぎず、早めに小児科にご相談ください。塗り薬は、処方された量と期間でしっかり続けていただくのが大切です
- 離乳食は標準的なスケジュールに沿って進めていただいて大丈夫です。卵・ピーナッツなどを心配で開始できないでいるときは、自己判断で遅らせず、ご相談ください
- 風邪のたびに抗菌薬を強く希望される必要はありません。当院では必要と判断したときに処方させていただきます
注意していただきたいこと
- 今回ご紹介した研究は、多くが「観察研究(実際に起こったことを集計した研究)」をまとめたものです。そのため「Aがあると Bが起こる原因になる」と完全に言い切れるわけではなく、「関連がある」段階のものも含まれています
- 日本のお子さんを対象にした研究は限られているため、数字はあくまで世界全体の平均としてご参照ください
- すでに食物アレルギーと診断されているお子さんが、「治っているかもしれないから」とご家庭で試しに食べさせるのは大変危険です。必ず主治医にご相談ください
受診のご案内
当院は完全予約制です。アトピー性皮膚炎や食物アレルギーのご相談は、まず一般診療を Web予約 からお取りいただき、あわせて Web問診 のご入力をお願いいたします。継続的な通院をご希望の方には、診察のうえで、当院からアレルギー外来の次回予約をお取りします。
受診前にご準備いただきたい情報は、以下のブログ記事にまとめてあります。
- 子どものアトピー性皮膚炎で受診するとき、伝えていただきたいこと(2026-06-08)
- お子さんの食物アレルギーが心配で当院を受診される前に、ぜひ整理しておいていただきたいこと(2026-06-09)
最後に
今回ご紹介した世界規模の研究は、当院が日ごろお伝えしている方針と同じ方向を、別の角度から後押ししてくれる内容でした。赤ちゃんの肌・離乳食の進め方・お薬の使い方など、気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
今後とも十日市場こどもクリニックをよろしくお願い申し上げます。
参考
- 原著論文:Islam N, Chu AWL, Sheriff F, et al. Risk Factors for the Development of Food Allergy in Infants and Children: A Systematic Review and Meta-Analysis. JAMA Pediatr. 2026;180(5):486-499. DOI: 10.1001/jamapediatrics.2025.6105
- 関連報道:Contemporary Pediatrics 記事
- 国内の関連研究(PACI-ON):赤ちゃんの湿疹を早めに治すと、食物アレルギーも減るかもしれません
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