こんにちは。
お盆が明けましたが、厳しい暑さがまだ続いております。皆様お変わりないでしょうか。
夏の時期は、ホットプレートや花火、熱いスープ、車のシートベルトの金具など、やけどのきっかけになるものが暮らしのあちこちにあります。
体調管理にはくれぐれもお気をつけください。
さて、お子さんがやけどをしたとき、「小児科でいいのか、皮膚科なのか、それとも救急車なのか」と迷われる親御さんは少なくありません。
今回は、軽いやけど(熱傷)であれば当院でも診察と処置ができること、そしてご家庭での応急処置と受診の目安をまとめておきます。
やけどの重さは「深さ」と「広さ」で決まります
日本熱傷学会は、やけどの重症度を深さと広さの組み合わせで分類しています。
そのうち、2度のやけどが体表面積の15%未満、3度のやけどが2%未満のものは、初期は外来で治療できる範囲とされています。
広さの見当をつけるときは、そのお子さん自身の手のひら1枚分が、体表面積のおよそ1%にあたると考えてください。
ただし子どもは体が小さいぶん、大人と同じ広さでも脱水を起こしやすく、大人の基準よりも低めに見積もる必要があります。
深さによって、治るまでの日数と傷あとの残り方が変わります。
- 赤くなるだけのやけど:数日で治り、傷あとは残りません
- 水ぶくれができる浅いやけど:10日ほどで治り、傷あともほとんど残りません
- 同じように見えて深いやけど:2週間以上かかり、傷あとが残ることがあります
- 白や灰色、茶褐色に変わり、さわっても痛みを感じないやけど:1か月以上かかり、傷あとが残ります
熱いお湯によるものは浅く、火によるものは深くなりやすい傾向があります。
もっとも、受傷した直後は深さを見きわめにくく、浅く見えたやけどが数日たってから深いと分かることもあります。
最初の手当てと、その後の経過を診ていくことの両方が必要になるのは、このためです。
まず、ご家庭でしていただきたい応急処置
1. 熱源から離し、すぐに水で冷やす
まずは熱の元から離し、5分以上は水道水の流水で冷やしてください。
ただし、小さなお子さんで広い範囲を長く冷やすと、体温が下がりすぎることがあります。
震えが出てきたら切り上げてください。
氷や氷水を直接あてるのも避けてください。
2. 服は無理に脱がせない
熱いものをかぶってしまったときは、服の上からそのまま水をかけてください。
皮膚に貼りついた服を無理にはがすと、皮膚まで一緒にはがれてしまうことがあります。
3. 水ぶくれは無理に破らない
破れていない水ぶくれは、そのままお持ちいただいて構いません。
破れた膜が傷にくっついている場合は、診察のときに洗いながら取り除きます。
4. 消毒液や民間療法は使わない
味噌、油、アロエ、歯みがき粉といったものを塗るのはやめてください。
市販の消毒液も使わないでください(理由は後ほど説明します)。
冷やしたあとは、清潔なタオルなどでそっと覆って受診してください。
食品用ラップで覆うのも避けてください。
5. 指輪や靴下、きつい服は早めに外す
やけどをした部分はあとから腫れてきます。
腫れる前に外しておくと、締めつけを防げます。
すぐに救急・専門の医療機関へ向かっていただきたいやけど
次のような場合は、当院の予約をお待ちいただかず、救急要請(119番)を含めた早めの対応をお願いいたします。
- お子さんの手のひら何枚分にもなる広い範囲のやけど
- 傷が白色・灰色・茶褐色で、さわっても痛みを感じないやけど
- 火事や煙を吸い込んだ、顔にすすが付いている、声がかすれている
- コンセントなど電気によるやけど、洗剤や薬品による化学やけど
- ぐったりしている、意識がはっきりしない
- 生後まもない赤ちゃんの、範囲の広いやけど
当院で対応できるやけど
範囲が狭く、皮膚が赤くなっている、あるいは水ぶくれができている程度のやけどであれば、当院で診察と処置をさせていただきます。
「指先を熱いものにさわった」「お味噌汁が少しかかった」といったご相談は、遠慮なくお持ちください。
やけどの処置は、一般診療の時間帯に対応しております。一般診療は当日の順番予約制ですので、Web予約とWeb問診をお取りいただいたうえでご来院ください。
当院では、傷を覆う材料としてハイドロコロイド素材の救急絆創膏の外用をお勧めしています。
薬局やドラッグストアで手に入るもので構いません。
実際に使う種類や貼りかえの間隔は、傷の深さと部位によって変わりますので、診察のときにお伝えします。
まずご相談いただきたいやけど
顔、手のひら、足の裏、関節、陰部といった部位のやけどは、深さや広さによって専門的な治療が必要になることがあります。
また、上の「すぐに救急・専門の医療機関へ」に当てはまるかどうか迷う場合もあると思います。
こうしたときは、予めWeb問診に状況を入力してご相談ください。
当院側でご来院いただく前に内容を確認して、当院では十分な対応が難しいと判断した場合には、当院からメールをお送りして、専門施設や皮膚科の受診をお勧めすることがあります。
判断に迷う段階でお持ちいただいて構いません。
どこで診てもらうのがよいかを一緒に考えるところから、お手伝いさせていただきます。
なぜ、やけどを小児科で診るのか
やけどの治療は、受傷した直後ほど頻繁に通っていただく必要があります。
遠くの病院まで毎日お子さんを連れて通うのは、ご家族にとって大きな負担です。
近くのかかりつけで続けられること自体が、治療の質を左右します。
また、普段の様子を知っている小児科医が診ることで、お子さんも親御さんも身構えずに済みます。
診察のついでに、次のやけどを防ぐお話もできます。
そしてもうひとつ。やけどのあと、親御さんはご自分を責めてしまうことが少なくありません。
目を離した一瞬を、何度も思い返してしまう。
けれども毎日の手当てを重ねて、傷が少しずつよくなっていく過程そのものが、お子さんの皮膚だけでなく、ご家族の気持ちも落ち着かせていきます。
まずは責めずに、一緒に治していきましょう。
当院の考え方 ― 傷は乾かさず、消毒しません
やけどの傷は、乾かさないことが治りを左右します。
当院では傷をきれいに洗ったうえで、乾燥させないための保護材で覆う方法(湿潤療法)を基本としています。
なぜ乾かさないのか
傷からしみ出てくる液には、皮膚を再生させる成分が含まれています。
皮膚の細胞は、乾いた状態では傷の上を移動することも増えることもできません。
深い部分の組織は、乾くと死んでしまいます。
傷を乾かすことは、治る力そのものを止めてしまうことになります。
かさぶたはできません。
これが湿潤療法の見た目の特徴です。
かさぶたの代わりに、傷の全面に淡いピンク色の薄い皮ができて、そのまま皮膚が完成していきます。
なぜ消毒しないのか
消毒薬は、細胞を包む膜を壊すことで効果を出します。
ところが細菌はその膜のさらに外側を硬い壁で守られているのに対し、人の細胞にはその壁がありません。
消毒すると、細菌よりも人の細胞のほうが先に壊れてしまいます。
同じ理由で、当院では乾いたガーゼも使いません。
ガーゼは傷にくっつき、はがすときに痛みと出血を伴い、交換のたびに傷を深くしてしまうためです。
食品用ラップは使いません
インターネットや書籍では、家庭での手当てとして食品用ラップで傷を覆う方法が紹介されていることがあります。
当院ではお勧めしていません。
日本熱傷学会は、医療用に作られていない材料をやけどの治療に用いることを厳しく制限すべきとし、とくに乳幼児には使わないよう求めています。
傷を覆うものは、ハイドロコロイド素材の救急絆創膏のように、そのために作られたものをお使いください。
手当てを始めたあと、ご家庭でしていただくこと
ここがいちばん大切なところです。
- 1日1回は、傷と傷のまわりを洗って、ハイドロコロイド素材の絆創膏を貼りかえてください。
最初のうちはしみ出る液が多いので、1日1〜2回になることもあります - 洗うのは水道水だけで十分です。
石けんやボディソープは使わないでください(しみて痛いだけです) - 貼りっぱなしにしないでください。
市販の傷用パッドを何日も貼ったままにして、赤く腫れて痛くなる方がいらっしゃいます。
毎日洗って貼りかえていれば、化膿することはまずありません - 決められた日には必ず受診してください。
見た目がよくなってきても、自己判断で手当てを終わりにしないようお願いします
なお、使う絆創膏の種類や貼りかえの間隔は、傷の深さや部位によって変わります。
当院からお伝えした指示を優先してください。
「膿が出た」と思ったときは
湿潤療法では、しみ出る液がたまって黄色っぽく見え、においがすることがあります。
傷の表面に白いものが残ることもあります。
これらは膿ではありません。
治る過程で必ず起こることで、日がたつにつれて減っていきます。
本当に感染しているときは、次のようなサインが出ます。
- 傷のまわりの赤みが広がる
- 腫れてくる
- 痛みが強くなる
- さわると熱い
- 熱が出る
このときは、当初受診予定だった日を待たずに早めにご受診ください。
多くの場合、傷をより丁寧に洗い直すことと、必要に応じたお薬で落ち着きます。
治ったあとのケア
皮膚がふさがっても、しばらくは手当てが続きます。
- 保湿:白色ワセリンを塗ってください。
市販のクリームは基剤がしみることがあるため避けてください - 日焼けを避ける:治ったばかりの皮膚は色素が残りやすいため、2〜3か月は日焼け止め、長袖、帽子などで守ってください。
夏に受傷した場合はとくにご注意ください - 傷あとの盛り上がり:治るまでに2〜3週間以上かかった場合、いったん治ったように見えた部分が、数週間してから赤く盛り上がってくることがあります。
強いかゆみを伴うこともあります。
テープで圧迫し、皮膚の緊張をやわらげることで予防・治療ができますので、必要な方には当院からご案内します
受診の流れ:必ずWeb予約をお願いします
当院は完全予約制です。
受診の際は必ずWeb予約をお取りいただき、あわせてWeb問診の入力をお願いいたします。
初めての方もWeb予約から登録できます。
いつ・何で・体のどこを・どのくらいの範囲やけどしたかをWeb問診に入力していただけると、診察がスムーズに進みます。
やけどは急なけがですので、当日の予約枠が埋まってしまっていることもあります。
当院をかかりつけとして登録していただいている方であれば、診療時間中にご連絡いただければ対応できる場合があります。
ただし予約状況によっては、その日のうちにお受けできないこともございますのでご了承ください。
初回の処置のあとは、傷の状態に応じて続けて診させていただきます。
状況を確認して、次回の診察予約を当方からお取りする場合もあります。
受診時の持ち物
- マイナ保険証(または資格確認書)
- 乳児医療証(小児医療証)
- 母子手帳
- お薬手帳
- (あれば)受傷した直後のやけどの写真
- (あれば)原因になったものの情報(お湯・アイロン・花火など)
写真は冷やす前後どちらでも構いません。
時間の経過による見た目の変化が分かると、深さの判断に役立ちます。
やけどを防ぐために
小さなお子さんのやけどは、家庭内で起こることがほとんどです。
この機会にお住まいを見回してみてください。
- 電気ケトル、炊飯器、加湿器の蒸気。
蒸気は見えにくく、ふれると深いやけどになります - テーブルクロスや電源コード。
引っぱると上の熱いものが落ちてきます - お味噌汁、スープ、カップめん。
お子さんの手が届く位置に置かない - ストーブ、アイロン、ヘアアイロン。
使い終わったあともしばらく熱いままです - 花火は必ず大人と一緒に、水を用意して
- 夏の車内。
シートベルトの金具やチャイルドシートの金属部分が高温になります - お風呂の残し湯とシャワーの温度
最後に
軽いやけどの多くは、乾かさず、消毒せず、毎日洗って手当てを続けることで、傷あとを目立たせずに治すことができます。
「これくらいで受診してもいいのだろうか」という段階でのご相談も大歓迎です。
判断に迷うやけどこそ、一度見せていただければと思います。
気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
今後とも十日市場こどもクリニックをよろしくお願い申し上げます。
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