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当院で出来ることその3:保護者の学びを支援する

 明けましておめでとうございます。
 本年もよろしくお願い申し上げます。


 気がついたらあっという間に1月も中旬になっておりました。
 院長は年末年始から先日の3連休まで何をしていたか、、、と申しますと「宿題」に追われていました。
 この「宿題」にはおそらく3月まで追われ続けると思います。


 ところで、現在私は熊本大学の大学院博士前期課程(修士課程)に在籍中です。
 現在の勤務地は神奈川県内ですし、神奈川県内在住です。
 でも大学の場所は熊本です。

 、、、あれ?
何で神奈川県に住んでいる人が、しかも神奈川県で働いている人が何故熊本の大学に在籍しているのでしょう?


 実は、私の在籍している大学院は「eラーニングでどこでも、いつでも学べる大学院」なのです。
 仕事が終わってからこの2年弱、更には大学院に入る前は科目等履修生として1年半学んでいるのでこの3年余りの間、多くの時間は指定された参考書やプリントアウトした論文、またはパソコンやiPadなどとにらめっこしています。
そしてこの大学院で学ぶことは医学ではなく、「大人の学びを支援する」学問です。
 詳細は以下のHPをご覧ください。
熊本大学大学院教授システム学専攻


 前回までに書いたとおり、私はこれまで小児科専門医、アレルギー専門医として多くの患者さんと保護者の方々とともに学び、歩んできました。
 そこでつくづく感じたのは、外来で自分が医者としてその子にとって良いであろう治療手段をお伝えして薬を処方したり普段の生活や症状が出たときの対応についてお伝えしても、結局医者自身ではなく患者さんおよび保護者が「理解して、実行する」ことが欠ければ治療は成り立ちませんし成果が出にくくなります。
 昔から小児科医の間では「保護者への指導が大事だ」と言われていますが(こういう書き方をすると偉そうで恐縮ですが)、実際にその方法についての研究は殆どありません。

 一方、患者さんや保護者の立場からすると先生の話は専門用語ばかりだし、色々質問しようとしてもいっぱい待っていて後ろの人たちに気を遣って色々聞けないし、なんか薬が色々出たけど本当にこれ全部使うのかな、、、という経験をされた方は多いのではないでしょうか。
 そしてまた受診したときに「この前説明して薬も出したのになんで使ってないの!」と怒られた日には多くの保護者は自分を責めるでしょうし(たいていの場合その必要はないのですが、、、)子供は医者嫌いになっても仕方が無い気がします。

 この医師(およびスタッフ)側と患者さん側の溝、専門家と一般人の溝はどうやって埋めれば良いのでしょう?
 ということで私も色々考えました。

 そして、自分で設定した目標は「医師側が患者さん、保護者(患者)の方々にわかりやすく説明する方法を学び身につけ、その方法を他の医師が使えるように体系化する」ことです。つまり、専門家と一般人の溝を少しでも埋めることです。
 でも上記の通り、そのようなことに取り組んでいる小児科医は殆どいません。いや、取り組もうとする先生方はおそらく多数いらっしゃるのでしょうが、その方法は決して誰でも使えるような形では確立していません。
 さあ、どうしよう。


 そこで私は教育工学に目をつけました。
 工学とは「どうやって(How to)」の学問であり、教育工学とは「どうやって教育するか」という学問です。そして、社会人向けの「企業内教育、企業内研修」も主要な研究分野となっています。
 いきさつは省きますが、ご縁もあり2012年秋からeラーニングおよび対面の講座などでも教育工学、特に「インストラクショナル・デザイン」という分野を中心に学んでいます。
 そして2014年からは上記、熊本大学大学院教授システム学専攻の大学院博士前期課程に入学し、教員の先生方や同期の方々とインストラクショナルデザインやIT、そして経営学や著作権など多岐にわたる内容を学んでいます。
 学生はほぼ全員社会人で、仕事をしながらこの大学院で学んでいます。周りの皆様を見るとタフだったり切れ者だったり人並み外れた根性があったり、と皆様に色々な特長がありとても刺激になります。本職は看護師さんや医療系専門学校の先生、医師など医療系の方もある程度いらっしゃいますが、それだけでなく一般企業の研修担当の方やIT系企業の方、また大学職員の方など多岐な職業の方が在籍し、お互い切磋琢磨しております。
 本職が違う分、同じ内容を学んでも人によって得意不得意の個人差がはっきり出るのが面白いところであり、学生の立場からすると大変なところでもあります。

 で、今年度は卒業研究としてeラーニング教材を作り改善し、それを修士論文としてまとめているところです。
 つまり、冒頭の「宿題」とは修士論文作成のことです。
 何とか今年度中に卒業すべく、開業の準備や通常業務だけでなく修士論文作成も進めているのが現状です。


 今、私が大学院で学んでいる内容を保護者の皆様に還元する方法として、以下の手段を考えています。

1. 講習会:ただ話しを聞いておしまい、の講習会をするつもりは一切ありません。
 なるべく皆さんも参加していただき頭や体を使ってちゃんと学び、ちゃんと理解出来ているかどうか確認出来る、そして参加者の皆さんが満足できている講習会を今まで開催しています。
 今までも小児ぜんそく教室や食物アレルギー教室、食物アレルギーの症状対応教室(エピペン教室)など多数開催実績があります。
 また、その結果は日本アレルギー学会、日本小児アレルギー学会、日本小児難治喘息・アレルギー疾患学会、食物アレルギー研究会、日本医療教授システム学会など多数の学会で発表しており、学会の論文誌には私の論文が掲載されました(医療職の能力開発 2015;3:55-60)。
 今後、ある程度落ち着いたらクリニック主催の講習会を多数開催する予定です。
 小規模であればクリニックを使い、ある程度大きな規模となる場合は近くの施設をお借りして開催できればと考えております。

2. 紙教材:集まって顔を合わせて学ぶ講習会も効果的なのですが、紙で作った教材で学んでもらう選択肢もあります。
 皆さんも、学生の頃は教科書や参考書を読んで問題を解いて学んでましたよね?それと同じコンセプトです。
 大学院の授業でピークフローメーター(喘息のお子さんが使う測定器具)の使い方の教材を作成し、実際に患者さんに用いております。必要であれば他の分野の教材も作っていこうと思っています。

3.eラーニング:今時の多くのお父さんお母さんはパソコンやスマホ、タブレットをお持ちだと思います。これらを利用して「いつでも、どこでも保護者の方が学べる教材」を作成出来ればと考えています。
 現在大学院の卒業研究として、保健師さん向けの食物アレルギーeラーニング教材を作成し改善しています。この内容も今年度以降、各種学会で発表させていただく予定です。
 開業後まもなくしたらこの内容を一部アレンジし、クリニックかかりつけの患者さんの保護者が受講出来る教材を作成する予定です。また、食物アレルギー以外にも色々な内容の教材を作って、保護者の方々に病気やその対応方法などについて学べるようにしていきたいと考えています。

 現在大学院で学び、上記のようないくつもの手段を実際に開発して使い感じることは、
「その人個人によって向いている学び方、苦手な学び方がある」ということです。
開業後は保護者の皆様のリクエストをお伺いしながら、上記の方法を組み合わせてより多くの患者さん、保護者の方々が効果的かつ効率的に、しっかり学べるような教材や講演会を提供出来ればと考えております。


 いかがでしょうか。
 当院では上記のようにお子さんの病気や健康に対し治療するだけでなく、その手助けとなる「保護者の学びを支援する」ことを目標とします。
 まずは普通の小児科クリニック、小児アレルギーを得意とするクリニックとして今年の5月から開業しますが落ち着いたら早々と上記の「保護者の学びを支援する」働きかけを色々展開していくつもりです。
 そして、この「保護者の学びを支援する」働きかけの結果をまとめて学会発表や論文作成を行い、他の小児科医も活用できるような形を作っていきたいという夢を持っています。
 ご期待ください!

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